【ニュース小説】「ご自分の口では言えないから私が言う。」

そんな時、ずっと黙って資料に目を落としていた小林専務が顔を上げ、使途不明金についての説明を、渡辺社長に要求した。

「社長が就任した2014年度以来、交際費と称した経費が、年間で1000万円を超える金額が計上されている。これは先代の社長の時はなかった経費だ。この落ち込みを見せるなか、いったい何に使われてるのか?教えていただきたい。」

渡辺と同期入社でもある小林は、一応会社での上下関係を考えながらも少し上から目線で声を発する。

渡辺は「社長に就任し、新体制となって、財界の諸先輩方との交流を深めるために使用している経費です。その際、当然会社の経営を圧迫するような使用の仕方をしないためにも、経理部長である広川君にも同席してもらい、接待や交流を進めるように努めてきました。

今後の新しいプロジェクトを進めるためにも絶対に必要なパイプをつかむための営業経費だと考えていただきたい。今日はその議題があると聞いていたので、広川部長を呼んでいる。広川君を中へ。」と、秘書に促す。

秘書がドアを開け、広川の名を呼ぶと、役員会議室の重たそうな扉から広川が入っていた。その瞬間、役員たちの視線が広川に集まる。その刺さるような視線に広川の緊張の度合は一気に上がった。目の前の光景が平面に見えだし、クラクラとゆっくり揺れてるような視界にとらわれた・・・。

秘書に「こちらへ」と言われたまま、重たい長机で細長い楕円に組まれた会議の場に立つと。