【ニュース小説】「ご自分の口では言えないから私が言う。」

小林専務が「この使途不明金について、広川君も同席したと伺ったが、どのように使用したのかを細かく説明してくれないか?」と強い口調で言われた。広川はその声が体中の筋肉に刺さる思いになった。

「緊張している」という思いは思えば思うほど、落ち着かなくなるもので、余計に緊張度が増していった。自分ではほんの一瞬であっても、広川の発言を待つ者たちにとっては、長い沈黙であった。小林の痰が絡んだ咳払いの音が耳に入ってくる。早く話せとせかされている。

渡辺は「広川君。」と声をかける。広川はハッとなり、渡辺の顔を見る。その瞬間、自分が今日ここに呼ばれた「役目」を思い出した。渡辺が社長としての立場上、言えないことを、自分が説明するのだと。

小林専務は「一体合わせて1000万円ものお金を何に使ったのだというのだ!」

広川は大きく息を吸い、その息の声に変えた。「ご説明させていただきます。」

皆、広川に注目する。

「それらのお金は、六本木の会員制のクラブで使用しました。財界の名だたる方々を接待いたしますので、絶対に秘密保持をしてくださるお店、『秘密クラブ』で行いました。

秘密クラブと呼ばれるだけありまして、入会金50万円、一度来店するごとに5万円、そこからオプションが加わると一夜で数十万円に上る時もございます。」