『戀は、素晴らしき哉。』徳田博丸コメディ脚本その2

『戀は、素晴らしき哉。』作・徳田博丸

はじめての方は、その1のこちらからどうぞ

**【キャスト】****

カズミ

アスカ

シンジ

コウタ

************

舞台は居酒屋

シンジとコウタが、ビールを飲んでいる。

シンジ・コウタ  カンパーイ!!!

ビールを飲む二人

女将   おめでとうございます!

コウタ  ほんとうれしいっす!女将さん!!(泣く)

シンジ  何泣いてんねん!

女将   でもそのくらい嬉しかったのよね。

コウタ  はい、必死でライブのオーディションに臨んで、

やっと受かったんで!解散しなくてよかった~~~!

女将   こないだと逆になってるわね。

シンジ  ほんまですね。

でもコレでやっとステージに立てる!頑張ろう!

コウタ  うん!それで、女将さん。ライブのチケットなんですけど・・・。

買ってもらえません?

女将   あ、チケットノルマあるの?

コウタ・シンジ  はい!!

女将   わかった、あなた達の晴れ舞台、見に行きます!

コウタ・シンジ ありがとうございます!前売りで1000円です!

女将   はい、千円(千円を渡す)

コウタ・シンジ ありがとうございます!

コウタ  初めて、チケット売れた!!

シンジ  正直自腹切るつもりでいた~~!

女将   応援するから、頑張って売りなさい!

コウタ・シンジ  はい!

コウタ・シンジ 他のお客に、

コウタ・シンジ 「突撃コロンブスです!」

シンジ  「突撃~!」

コウタ  「チケット買ってください」

など声をかけていくなどあって・・・。

カズミとアスカがやって来る

女将   いらっしゃ~い!!   ああ、カズミ~!

カズミ  先輩!食べに来ましたよ。

女将   ありがとう。カウンターしかないけど座って、

もうすぐココらへん(コウタたちの席の事)空くし、

広く使えるから。

コウタ  いや、だからそういう言い方失礼でしょ!

女将   あ、聞こえてた?ごめんごめん。

シンジ  カズミさん!こんばんは!

カズミ  なんだ、あんた達か。さっさとご飯食べたら帰りなさいよ!

シンジ  そんな~ひどい。せっかく会えたのに~。

アスカ  なんですか?この人たち・・・。

カズミ  売れないお笑い芸人。たまにおごってやると懐いてしまって。

アスカ  へえ・・・。

コウタ  野良猫みたいにいわないでください。

カズミ  あ、紹介します。一緒の会社のアスカちゃん。

アスカ  初めまして、アスカです。

女将   女将です。アスカちゃんもカズミと同じデザイナー?

アスカ  私は事務です

女将   そうなんですか、私、元々デザイナーだったんです。

カズミ  先輩にはいろいろ教えてもらって、今の私があるの。

アスカ  へえ

女将   よろしくね。座って、ビールでいい?

カズミ  はい!

カズミ・アスカ、座る

シンジ  僕たち!

シンジ・コウタ  「突撃コロンブス」です!

カズミ  知ってる!

シンジ・コウタ  !!

シンジ  と、突撃~~~!

コウタ  「チケット買ってください!!」

カズミ  は??  チケットってなに?

シンジ  今度ライブに出られることになったんです!

どうしてもカズミさんに見てもらいたいんです!(チケットを差し出す)

カズミ  へえ~!(チケットを手に取り見る)

この日、あああ、行けないなあ~。  またね。(あしらう)

シンジ  ええ~~・・・。

コウタ  ケチ。

カズミ  誰がケチだって?!

コウタ  なんでもないっす!

カズミ  しっし!

コウタとシンジも罰悪そうに座る

アスカ  カズミさん、ココよく来るんですか?

カズミ  うん。

アスカ  カズミさんのイメージぴったりですね。ごちゃごちゃしてて小汚い

女将   !?(ビールを置く)

カズミ  ちょっと、バカにしてるの?・・・・(愛想笑い)

アスカ  違いますよ!いつもボロボロになるまで仕事して、

デスクも汚くて、最悪な感じじゃないですか!

カズミ  全然、フォローになってない・・・。

アスカ  すみません・・・

二人、乾杯して・・・

アスカ  それより、相談したい事ってなんですか?

私でよければ力になりますよ。

カズミ  ありがと・・・。誰にも言わないでね・・・実はね・・・私・・・

今、二人の男から告白されてるの!!

アスカ  !?

コウタ・シンジ(特にシンジ)  えええええ?!

カズミ  何きいとんねん!

コウタ  いや、聞こえますよ!それだけデカい声だと!

カズミ  話しに入ってくんな。ハウス!

シンジ  わん・・・。

アスカ  すごいですね!で、どんな人なんですか?

カズミ  どっちも、友達の紹介の友達の紹介の友達だったんだけど、

コウタ  遠・・・。

カズミ  !!    今はレストランで調理師をしていて、

修業中なんだけど、すごく優しい人。

アスカ  へえ。もう一人は?

カズミ  もう一人は、外資系企業に勤めていて、すごくワイルドで、

俺についてこい!的な人なの。

アスカ  へえ!で、なんて告白されたんですか?

カズミ  優しい方の彼は、一緒に映画を見に行った後。

「カズミさんの事をもっと知りたい。付き合ってください」って

言われたの。

アスカ  すごい!

カズミ  それで、ワイルドな方は、夜景を見ながら。

「こんな綺麗な風景をいつまでも君と一緒に見ていたい。」って言われて・・・。

アスカ  ステキ!で、なんて答えたんですか?

カズミ  どっちも答えられないわよ!同じ日に2人とデートしたの

に!

シンジ  ダブルヘッダー?!

カズミ  そう、12時から17時までと 17時30分から22時ま

で!

コウタ  アグレッシブ!

カズミ  まさか、どっちからも告白されるなんて、信じられない。

でも、二人の男が、私をかけて取り合うのよ!

「カズミさんは僕のモノだ!」「いいや、俺のカズミだ!

誰にも渡さん!!」  キーン!キーン!キーン!

「待って、私の為に争わないで!」

(*など、割り箸を剣に見立てて、戦う二人を想像する)

アスカ  そんな剣で戦うと、警察につかまりますよ。

カズミ  もう!想像よ!

コウタ  2人の男に告白だなんて、なんかにだまされてるんじゃないですか?

カズミ  どういう意味?!

シンジ  カズミさんがモテるなんて考えられないっす

カズミ  (シンジをシバク)ちょっと!シバくよ!

シンジ  いた!

コウタ  もうシバイてますやん。

シンジ  そういう意味じゃなくて・・・。カズミさんが男とモテるな

んて思ってもみなかった

カズミ  一緒でしょ!私がモテたらおかしいって言うの?

シンジ  すみません、そんな事ないです。

カズミ  ったく・・・。 ねえ、どうしたらいいと思う?

アスカ  私、全然恋愛に興味ないんで、なんて言ったらいいか・・・。

カズミ  何、それ?恋愛に興味はない?!

それでいいの?若さは戻ってこないのよ!

それでいいの?一人って寂しいものなの

よ!それでいいの?恋愛は女を輝かせる一番の薬なのよ!

それでいいの?!

アスカ  はい。正直、どうでもいい感じです。

カズミ  か~~~~~、もったいない!!

若い子はどうしてこんな無気力なの!!

私ね、恋をしないで仕事ばっかりして生きてきた。

そしてボロボロになった自分の顔を鏡で見た時気づいたの。

それはね・・・「空しさ」。

心にぽっかり隙間が空いてる自分に気づいたの!

女としての人生、このまま終わってもいいのかしらって・・・。

その隙間を埋めてくれるのは仕事じゃない。恋なの!!

だから私は恋をするの!わかる!?

アスカ  ・・・なんか必死すぎるのって、引くじゃないですか!

仕事もして、恋までしちゃうと自分の時間なくなっちゃうし。

それに男なんて、バカばっかりだし・・・。

カズミ  あかん!そんなんあかん!アスカちゃん!あかん!

あなたは恋をすべきよ!もっと輝けるはずよ!私のように!

アスカ  ・・はあ?

(*コウタ(否定的)・シンジ(肯定的)にリアクション)

カズミ  恋を忘れた乙女はね、飛ぶことを忘れた鳥と同じ!

思い出して、一度でもトキメいた事あるでしょ。

アスカ  はあ、まあ・・・。

カズミ  もう一度ときめくべきよ!

そうすれば必ず私のようにモテるようになるから!

アスカ  はあ・・・(携帯に気づく)あ、すみません、ちょっと家に電話しなきゃ。

と、アスカ、電話をしに外に出て行く・・・

カズミ  ・・・。

シンジ  カズミさん、今そんなにモテるんですか?

カズミ  そう。

コウタ  物好きもいるもんですね(笑いながら)

カズミ  あんた何笑ってるの

コウタ  笑ってません

シンジ  ほんまや、笑うなんて失礼やぞ!(笑いがこみあげてくる)

カズミ  笑ってるがな! あんたらねぇ!バカにしてるの?

コウタ  いえ、幸せを分けてもらって、にやけてます

シンジ  僕はちょっとジェラシー感じます!!

僕もカズミさんと恋がしたい!!

カズミ  はいはい。まったく、私の周りは「本当の恋」を知らない子たちばかりね。

アスカはかわいいのに、恋に興味がないなんて勿体ないわ・・・。

カズミ、何かを思いつく

コウタたちと、外にいったアスカを見比べる

カズミ  ねえ、あんたたち、恋したくない?

シンジ  したいっす!

カズミ  あんたは?!

コウタ  まあ、それが何か?

カズミ  あの子、どう?

コウタ・シンジ はあ?

カズミ  結構かわいいでしょ?

シンジ  ええ、まあ。

カズミ  あの子恋愛に興味ないっていってるのよ。可愛そうだと思わない?

コウタ  そうですね。

カズミ  だからね、私が恋をさせてあげようかなと思って。

コウタ・シンジ は?

カズミ  鈍いわね。だから私が、アスカに恋をプロデュースするのよ。

コウタ・シンジ  ん?!

カズミ  あんなに若いのに恋を知らないなんて、かわいそう過ぎるで

しょ!だから、あなた達が、アスカにアタックして、

恋愛の素晴らしさをおしえてあげるのよ!

コウタ・シンジ  ええええええ?!

コウタ  でも今日会ったばっかりですよ!

カズミ  一目ぼれって恋もある!

コウタ  彼女の事知らないし

カズミ  紹介から始まる恋もある!

コウタ  向こうの気持ちもあるでしょ!

カズミ  気持ちは、変わるものよ!

コウタ  無茶苦茶ですやん!

シンジ  そうだ無茶苦茶だ!僕の気持ちはどうなるんですか!

カズミ  問答無用!

シンジ  僕は彼女がタイプじゃない!

カズミ  問答無用!

シンジ  僕はカズミさんが好きなんだ!!!

コウタ  ・・・え?!3人目?!

カズミ  もん・・・前払い!

コウタ  門前バラわれた!!

シンジ  えええええ・・・(崩れ落ちる)

コウタ  カズミさん、相方の心を踏みにじりすぎです!大丈夫か!もどってこ~~~い!

意識がどこかに行ってるシンジ・・・。

コウタ  俺達、今漫才が一番やし、恋にうつつを抜かしてる暇なんてないんです!

シンジ  カズミさ~~~ん・・・。

コウタ  (だまってシンジをシバク)

カズミ  何も本気で好きにならなくていいの!

私の幸せをちょっとでも味わって、恋のステキさをわかってもらいたいの!

コウタ・シンジ  はあ・・。

カズミ  あんたらがアスカの秘められた恋心を導き出すのよ!

コウタ・シンジ  えええ~~~!

カズミ  アンタは優しく、あんたはワイルドに!

コウタ・シンジ  いやでも(ブツブツ言う)

カズミ  つべこべいうな!ライブのチケット全部買ってやる!

コウタ  ホントですか!じゃあやります!シンジ、お前もやるよな!

シンジ  う、うん・・・。

カズミ  よし!でも見に行かないけどな!

コウタ  この鬼~~~!!

♪ギターの軽快で楽しい音楽~~

女将   こうしてライブチケットで買収された突撃コロンブスの二人。

カズミの策略で疑似恋愛を仕掛けられたアスカちゃんに、

若手漫才師の二人が、猛烈にアタックを仕掛けていきます!

しかし、恋愛に淡白なアスカちゃん。二人は大苦戦!

*コウタ上手側

コウタ  メールやライン送っても無視されます!

カズミ  どうせ暇やろ!ほな直接会いにいかんかい!(殴る)

コウタ  ええ?!

*シンジ下手側

シンジ  もう無理です!全然振り向いてくれません!

カズミ  お前の推しが弱いんやろ!!(殴る)

シンジ  うお!

カズミ  とにかく押して押して押しまくれ!そやないと、

今までテンでおごってやった飯代、全部返してもらうで!!

コウタ・シンジ  えええ~~~~~~!?

*シンジ、上手へハケ コウタ 下手へ!

♪~~ギター大きくなる~BGMに

*シンジとアスカ 2ショット

女将   カズミの強引な指示で、必死になるコウタ・シンジ、

なんとかそれぞれデートに連れ出すことが出来た。

シンジ  USJに来た!     何に乗る?

アスカ  並ぶのしんどーい

シンジ  エクスプレスパス買ったから、これで時間短縮できるで!

アスカ  ええ、すごーい!ありがとう。さ、いきましょ!

シンジ  よし!じゃあいこう!

アスカ  今日は友達もココにきてるんだって、合流してもいい?

シンジ  え?う、うん・・・。

カズミ  (シンジをシバク)なにやってんねん!二人きりでいかんか

い!!!

コウタ  甲子園のチケットとれたよ!!

アスカ  私、野球観戦はじめて!

コウタ  燃えるで~~!

アスカ  でも私巨人ファンなの!

コウタ  ええ?!そうなの?

アスカ  じゃあ巨人の帽子かぶって応援しましょう!

コウタ  う、うん・・・。

カズミ  (コウタをシバク)それならお前も巨人ファンになれーー

ー!!

♪~~ギター大きくなる~BGMに

女将   六甲おろしを歌いたくても歌えない阪神ファンは、

トラではなく猫のようなもの。2匹の雄猫は、

必死でアスカにすり寄り、ご機嫌をうかがい、

あの手この手でデートに誘いだし続けました。

コウタ  もう、お金がいくらあっても足りません!

シンジ  俺達、貧乏若手芸人なんすよ!

カズミ  金がないならバイト紹介してやる!

鳶にホストに人体実験!アスカの為に働くんや!

コウタ・シンジ  えええ?!

カズミ  さっさと稼げ!!

コウタ・シンジ 外にハケ

♪~~ギター大きくなり~BGM~

女将   悪徳金融のように、無理難題を指示し、

あの手この手でアスカとの距離を近づけていきます。

そして、数週間が過ぎたある日・・・・。

*コウタ・シンジ 上手側にハケ

♪~~~FO

アスカ、上手側からやって来る

カズミ  ・・・・。

アスカ  先輩、遅くなってすみません。あれ?どうしたんですか?

カズミ  ・・・どうしたもこうしたもないわよ・・・。

告白されてた二人にふられたの~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~。

アスカ  ええ?なんで?!

カズミ  私がなかなか答えを出さないでいたら、

2人とも「すぐに答えをくれないのは、他に好きな人がいるんだね。」

っていって、私の前から去っていったのよ!

ああああああああああああああああああああああああああ

にがしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

アスカ  そうなんですね・・・。

でも何もだまし取られなくてよかったじゃないですか。

カズミ  ・・・・。

アスカ  え?もしかしてお金、貢いだとか?

カズミ  貢いでないわよ!

アスカ  じゃあ何か取られたとか?

カズミ  それはとられたかも!

アスカ  スグに警察に行ったほうが!

カズミ  警察じゃあ解決できないの。とられたのは私のハートよ。

アスカ  ・・・すぐに病院に行った方が・・・。

カズミ  なんでよ!ああああ、最悪・・・

女将   さっきからずっとこの調子なの。

アスカ  へえ・・・それで私を飲みに誘ったわけですね。

女将   なんにします?

カズミ  熱燗

女将   あまり飲みすぎないでね

アスカ  私はビール。

女将   はいよ、熱燗とビール!

アスカ  (どこかウキウキしている)

カズミ  何あんた、なんか楽しそうね。

私が振られたのがそんなに楽しいの?

アスカ  違います違います。

先輩、「恋」って、いいですね・・・。

カズミ  は?!

アスカ  私ね、この間先輩に「恋愛っていいものよ」って言われてか

ら考えたんです。前向きに恋をしてみようって。

カズミ  (酒飲みながら)うん、それで?

アスカ  でも、好きな男性も現れていないのに、

恋なんてできないって思ってたんですけど、現れたんです。

しかも二人も!

カズミ  え?!

アスカ  一人は優しい人で。もう一人は凄くワイルドな人なんです。

カズミ  それってあれでしょ?「突撃・・・」。

アスカ  そう、2人とも「突撃っ!」って感じで、私の事を好きって

言ってくれていて、すごく幸せなんです。

カズミ  幸せ・・・ふん、本当にそうかしら・・・。

アスカ  先輩、私先輩に謝らないといけません!

先輩がどっちも選べないって言っていた時、

正直ずっと先輩の事をバカにしていました。

いい年して恋とか言って何浮かれてるの!

いい年して二人から告白されたなんて、奇跡だろ!

いい年して、恋ってステキっていってるの、キモイって思っていました!

カズミ  結構ヒドイこと思っってたのね!

アスカ  あの時、先輩の気持ちわからなかったんですが、

今ならわかります。本当にどっちも選べないですよね。

カズミ  (騙されてるとも知らずに・・・と思い、少し面白がる)

本当に、あなたの事を好きだって言ってるの?

アスカ  はい!二人とも真剣に!

カズミ  どんな風に?

アスカ  優しい方の人は、必死でバイトしたお金で安いけど

おいしいお店連れて行ってくれたり、お金がないから彼の家で

映画のDVDを一緒に見たりしています。

カズミ  ちょっとまって、彼の家にいったの?

アスカ  はい。それと、ワイルドな人もお金がないけど、

外に連れ出してくれて一緒に泊まりがけで釣りに行ったり、

ジョギングしたりサッカーしたりして、体を動かすのが

こんなに気持ちいいもんなんだって事を教えてくれました。

カズミ  ちょっとまって、一緒に泊まりにいったの?

アスカ  はい!

カズミ  (小声で)この子、意外と肉食系ね。

アスカ  あ、心配しないでください。そんなに軽い女じゃないですから。

カズミ  いや、今聞いただけでも十分軽いわよ。

ホントに泊まったりしてるの?

アスカ  はい

カズミ  あいつら、そんな報告受けてない・・・。

アスカ  どうかしました?

カズミ  いや、なんでもない・・・

アスカ  二人とも、すごく真剣で、私を大事にしてくれるんです・・・。

だから、告白されてどっちを選べばいいかわからなくて・・・。

カズミ  ああ、それだったら、どっちも選ばなくてもいいんじゃない?

アスカ  なんで?

カズミ  だってあいつら、私に言われて・・・

ガラッと戸が開き、コウタが入ってくる

女将   いらっしゃい!

コウタ  あ、アスカ、ココにいた!

アスカ  コウタくん!

コウタ  探したんだぞ!家にいないから。

アスカ  ごめん、先輩に呼び出されて。

コウタ  あ、カズミさん、こんばんは。

カズミ  こ、こんばんは・・・。

アスカ  今日は先輩と一緒だから安心して。

コウタ  そうか

アスカ  先輩、すみません、さっき話してたの、コウタ君だったんで

す。

カズミ  ああ、そう。・・・知ってたけど・・・。

ガラッと戸があき、シンジが入ってくる

シンジ  すみません!ここに・・・アスカちゃん!!探したよ!

アスカ  シンジくん!

シンジ  コウタ、なんでお前がココにおるんや!

コウタ  シンジ、お前こそなんの用事や!

シンジ  アスカちゃんが家にいないから心配して探しにきたんや!

コウタ  心配せんでええ!今夜はカズミさんと食事なんや。

シンジ  それなら一言言ってくれればよかったのに。

コウタ  なんでお前に言わなあかんねん!

シンジ  お前にいうてない!アスカちゃんにいうてんねん!

コウタ  なんやと!

コウタ、シンジにつかみかかる

二人、割り箸を持ち、

コウタ  いざ、

シンジ  いざ、勝負!

割り箸を剣のように戦う

カズミ  え?!

シンジ  アスカさんは僕のモノだ!

コウタ  いいや、俺のアスカだ!誰にも渡さん!!

アスカ  まって!私の為に争わないで!!

カズミ  はあ? ちょっとまって、そこまでしなくていいわよ。

コウタ  は?

シンジ  カズミさんが引っ込んでてください!

俺とこいつの問題なんで!

カズミ  はあ?

コウタ  アスカは俺のモノだ!

シンジ  アスカちゃんは誰にも渡さない!

カズミ  ちょっとやめなさいよ、あなた達!

コウタ  やっぱりこれ以上、お前とは漫才はできない!

シンジ  僕もや! よし、解散や!

カズミ  ええ?? ちょっとまって、2人ともどうしたの?

あれだけオーディションに受かって喜んでたのに!

シンジ  オーディション?漫才のオーディションで選ばれるよりも、

アスカちゃんの恋人オーディションに選ばれる方が大事ですよ!

カズミ  何いってるの?あれだけ頑張るって言ってたのに!

コウタ  だから頑張ってますよ!アスカの恋人の座を狙ってね!

カズミ  ええええ?!ちょっとまって! 二人とも、こっちに来て!!

カズミ・コウタ・シンジ 端っこによって

カズミ  あんたたち、アスカにアタックしろって言ったのは、

お芝居って事だったでしょ!なんでこんなことに?

シンジ  最初はイヤイヤだったけど、どんどんアスカちゃん

の事を好きになっていったんです!

カズミ  ええ?!

コウタ  だからアスカを他の男に渡したくない!たとえシンジでも!

シンジ  何を!(つっかかる)

カズミ  まってまって!意味がわからない!

漫才が一番で、恋にうつつ抜かしてる暇ないっていってたじゃない!

コウタ  夢より、惚れた女ってことですよ!(かっこつけて)

カズミ  !!!なにかっこいい事言ってるの!?

あなた達は私の指示通り動くだけでいいっていったでしょ!!

シンジ  この気持ち、もう誰にも止められねえ!(かっこつけて)

カズミ  えええ?!止められねえって・・・。

アスカ  戦う男って、すごく素敵。しかも勝った方に、私が選ばれるのよ!

カズミ  ええ、ちょっと待って!ストップスト~~~ップ!

♪ギターで不安なアルペジオを・・・。

L―ライト絞れるか・・・。

*シンジとコウタは殴り合うスローモーション!

*カズミとアスカ、背中合わせになって・・・。

ターンしながらしゃべっていく

カズミ  どうなってるの?私が指示したお芝居よね?

なんで本気になっちゃってるの!?

アスカ  ふふふ、ゾクゾクする、男が私を取り合い戦うなんて!

味わった事がない感覚・・・たまらない・・・。

さあ、私を手に入れるのはどっち!?

カズミ  やめて、やめて、やめて~~~~!!!

シンジ・コウタ 刃物を出して

♪ カットアウト

シンジ・コウタ  死ね~~~~~~!

カズミ  え?!

シンジとコウタ、刺しあう

カズミ  きゃあああああ・・・。

どうなってるの?!どうなってるのよ!!!

女将   あなたがそう望んだんでしょ?

♪~イン

カズミ  は?

女将   あなたがそう望んだ結果になってるのよ。

彼女に、そして彼らに恋の素晴らしさを教えてあげた。

その結果がこうなったの・・・

カズミ  そうだけど・・・。こんな事になるなんて・・・。

女将   これがあなたの心の中なのよ。あなたが望んだ事・・・。

カズミ  こんな事望んでない!望んでない!!

L―照明入る

カズミ  ?!

コウタ  はい、とういわけでしてね、ワーワーいうておりますけども、

1人の女性を二人で取り合うと、ホントに七転八倒、ロクな事ない。

シンジ  そりゃあロクやないやろ。だって、「三」角関係なんやから。

コウタ  四の五の言わずに突撃だ!

シンジ・コウタ  突撃コロンブスでした!

ワーワーなる 拍手で盛り上げる

アスカ・女将、拍手! 盛り上がる!

カズミ  ・・・・・何コレ・・・・・???

アスカ  突撃コロンブスさんです。

カズミ  知ってる。

女将   あれ?驚いた?

カズミ  驚いた。

シンジ  大丈夫ですか?

カズミ  大丈夫・・・

カズミ、自分を取り戻す。そしてビシッと指をさし、

カズミ  どういうことか、説明して!!(ビシッと決める

女将   私がばらしたのよ。。

カズミ  はあ?

女将   嘘で相手の気持ちをどうこうするなんてひどすぎない

だから、全部アスカちゃんに話をして、うまく行ってる振りをしてたんです。

カズミ  はああああ?じゃあ私だけがいい気になっていたってこと?

シンジ  そうっす!

カズミ  (シンジの頭を叩く)

軽いのムカツク!仕掛けた私がだまされていたっていうの!?

シンジ  はい!

カズミ  うるさい!(シバク)

シンジ  !!

アスカ  もう先輩ヒドイですよ。

コウタ  僕たちも人をだますのイヤだったんですよ。

カズミ  結果私をだましたくせに!!

女将   自業自得よ!

カズミ  最悪!私バカみたいじゃない!何やってんの!

シンジ  カズミさん、調子に乗りすぎです

カズミ  あんたは黙って!

シンジ  黙ってられません!!!!

カズミ  ?!

シンジ  二人の人に告白されて、ウハウハだったのかもしれませんが、

本当にその人たちの事を好きだったんですか?

カズミ  え?

コウタ  そうです。チヤホヤされて、それで気持ちよくなってただけなんじゃないですか?

カズミ  あんたに何がわかるって言うの。

アスカ  先輩の方がちゃんとした「恋」をしてないじゃないですか。

カズミ  ・・・バカにしないでよ!ちゃんと恋をしてたわよ!

アスカ  嘘!遊びに連れて行ってくれる都合のいい男としかおもってなかったはず!

それだから二人同時に付き合ったりするんですよ!

カズミ  あんたいい加減にして!

アスカ  先輩、ちゃんと周りを見てください!

本当に先輩の事を好きでいてくれる人がいるじゃないですか!

カズミ  ・・・え?

カズミ、シンジを見る・・・

コウタ  シンジは、ずっとカズミさんの事を見守っていました。

だから今回の事も辛かったと思います・・・。な、シンジ。

シンジ  はい。なんだかすみません!

アスカ  なんで謝るのよ。好きなのに、謝ることないよ。

カズミさん、私の事より、カズミさんの幸せにフォーカスをあててください。

カズミ  ・・・。

シンジ  カズミさん、僕はあなたの事が好きです。

ずっと、ずっと好きでした。だから、僕だけを見ていてください。お願いします!

カズミ  ・・・。シンジくん・・・・

オッケーか…という空気を作って・・・。

カズミ  ごめんなさい。

シンジ  えええええええええええええ?!

なんで?!

カズミ  ガキは、ちょっと・・・。

シンジ  ええええ~~~!?

アスカ  ちょっと、カズミさん・・・。

カズミ  アスカ~、じゃあ今度コンパいこうか!医者とのコンパがあるのよね~~

アスカ  え、医者!いきます~!

コウタ  ちょっと~~!!  女ってこわ~~~・・・。

シンジ  ああああ~~~

♪ギターで

「笑えれば・・・」

♪笑えれば  ただ笑えれば

めぐりめぐって つながりあえば・・・

ひとりきり 夢の中で

待ちわびた 雨の中を

誰よりも 心強く

生きていこう 青いままで

明日には また 晴れるかな? きっと

笑えれば ただ笑えれば

めぐりめぐって つながりあえば

心の音を 重ねあわせて

ワハハと笑い 響きあえる

笑えれば ただ笑えれば

めぐりめぐって つながりあえる

=幕=